東京高等裁判所 昭和32年(く)13号 決定
被告人 高原平七郎
〔抄 録〕
よつて本件記録を精査するのに申立人は昭和三十一年十二月二十二日道路交通取締法違反被告事件について罰金千五百円に処せられたところ右裁判に不服であつたため同月二十八日附をもつて控訴申立書を「高等裁判申立書」と題して直接当裁判所に郵送したところ同月二十九日当裁判所当直員においてこれを受け取り、昭和三十二年一月四日当裁判所事務局総務課文書係においてこれを引きつぎ、更に同月七日当裁判所刑事庶務係に回送され、右庶務係より被告人方に返送され被告人は同月十二日再びこれを浦和簡易裁判所に郵送し同裁判所には翌十三日送達せられたので同月十七日同裁判所中田四郎裁判官は右の申立は控訴権の消滅後になされたものであること明らかであるとして刑事訴訟法第三百七十五条により控訴棄却の決定をなし該決定謄本は同月十九日申立人方へ送達されたものであること明らかである。そして適法に控訴を提起するには法定の期間内に控訴申立書を判決を受けた第一審裁判所に差し出すべきものであることは刑事訴訟法第三百七十三条第三百七十四条の規定により明白であるから控訴権を有する者が法定の期間内に控訴申立書を控訴裁判所に提出しても適法な控訴の効力を生ずるに由なきものといわざるを得ない。ただ控訴申立書を控訴裁判所に提出したときも、控訴裁判所から囘送された申立書が控訴申立期間内に第一審裁判所に到達した場合に限り控訴申立の効力を生ずるものと解するのを相当とする。然るに本件控訴申立書は前記の如く法定の控訴期間内を経過した昭和三十二年一月十三日第一審裁判所たる浦和簡易裁判所に送達されたものであるから原裁判所が刑事訴訟法第三百七十五条により決定をもつて本件控訴を棄却したのは相当であり、これを非難する所論は到底採用することはできない。
(中村光 脇田 鈴木)